県産ブルーベリーの加工適性評価と果汁製造技術の開発
廣瀬正純・堀
元司
食品産業担当
Evaluation of Processing Suitability and Technological Development to
Manufacture of Blueberry Produced in Oita Prefecture
Masazumi HIROSE
・
Motoshi HORI
Food Industrial Gr.
要
旨
県産ブルーベリーの品種・系統別果実品質及び加工適性を評価した結果,果実を形の残ったまま使用するシロップ 漬け,冷凍果実,ジャムなどの加工原料としては食感の優れるハイブッシュ系統に適性があり,果実の形を残さず使用 する果汁,ピューレーなどの加工原料としては搾汁率が高いラビッドアイ系統に適性があると思われた.
また,果汁製造については,ペクチナーゼ処理することにより搾汁率が向上するとともに,果皮の色素が果汁に移行 するので色出し処理の必要がないことが明らかとなり,搾汁機についてはスクリュープレスの適用が可能であることが 明らかになった.
1.
はじめに
近年,消費者の安全・安心志向を背景に県内の食品加 工企業においても県産原料を使用した加工品開発の意向 が強くなっている.本県はブルーベリーの栽培が盛んで 原料果実が入手可能なことから,県産ブルーベリーを使 用した加工品を製造している企業が多く,新規加工品の 開発,現在の加工品の品質向上に関する要望も多い.本 県のブルーベリーは品種が多く加工に適した品種が明ら かでないうえ,加工技術も確立されておらず,加工適性 の解明と加工技術の確立が課題となっている.
そこで,県産ブルーベリーの品種別加工適性を明らか にするとともに果汁等の一次加工技術を開発し,既存製 品の品質向上を図る.
2.
実験方法
2. 1 主要品種の加工適性の解明
九重町において,ブルーベリーのハイブッシュ系統の 品種,ブルークロップ,ジャージー,バークレー,コビ ル,レイトブルー,ブリジッタおよびラビットアイ系統 の品種,ブライトウェル,ティフブルー,ウッダード, デライトをそれぞれ収穫盛期に完熟果実を採取した.
採取した果実はただちに持ち帰り,重量測定,官能評 価をした後,- 30℃で冷凍保管し,後日分析及び加工適性 評価に供した.
2. 2 果汁等一次加工技術の確立
今年度は,果汁への加工技術について検討した. 凍結果実を解凍後,搾汁を試みたが粘度が高くピュー レー状になり搾汁が困難であったことから酵素処理によ る搾汁率向上を試みた.使用した酵素はペクチナーゼ 3S, ペクチナーゼ SS,セルラーゼオノズカ,マセロチーム A で,果実に対し 0. 1%添加し,45℃で 2 時間保持後搾汁し 搾汁率を調査した.
ブルーベリー果実は,色素のアントシアニンが果皮に のみ存在し果肉にはないことから,果皮中のアントシア ニンを果汁へ溶解させるいわゆる「色出し処理」を試み ようとしたが,上記酵素処理過程で果汁に色素が溶出す る減少が観察されたことから,酵素処理から搾汁にかけ ての工程における果汁中色素量を調査した.
以上の検討でブルーベリー果実の搾汁方法が概ね明ら かになったことから,ある程度の実用規模で搾汁試験を Fi g. 10 に示した工程で行い,搾汁率,果汁品質を調査し た.
3.
実験結果
3. 1 主要品種の加工適性の解明
品種,系統と果実重を Fi g. 1 に示した.ハイブッシュ 系統の品種( ①∼⑤) はラビットアイ系統の品種( ⑦∼⑩) に比べて果実が小さい傾向がみられた.
品種,系統と果実の Br i x を Fi g. 2 に,酸含量を Fi g. 3
に示した.ハイブッシュ系統は Br i x が低く,酸含量が高 い傾向が,ラビットアイ系統は Br i x が高く,酸含量が低 い傾向がみられ,生果としての食味はラビットアイ系統 が優れていると思われた.
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50
① ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
果
実
重
g
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー
③ バ ー クレー
④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト
■ハ イブッシュ ■ラビットアイ
F ig.1品種系統と果実重
6 7 8 9 10 11 12 13 14
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
B
r
i
x
① ブル ー クロップ ② ジャー ジ ー
③ バ ー クレー
④ コビル ⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト ■ハ イブッシュ
■ラビットアイ
F ig.2 品種系統と果実の Brix
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
酸
含
量
%
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー ③ バ ー クレー
④ コビ ル ⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジ ッタ
⑦ ブライトウ ェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダ ー ド ⑩ デ ライト ■ハ イブッシュ
■ラビットアイ
F ig.3品種系統と果実の酸含量
品種,系統とアントシアニン色素含量を Fi g. 4 に示し た.品種によるばらつきが大きく,ハイブッシュとラビ ットアイの系統間での差はみられなかった.
果実の食感の官能評価結果を Fi g. 5 と Fi g. 6 に示した. 果皮の硬さは明らかにハイブッシュ系統が軟らかく,果 肉のざらつきは明らかにハイブッシュ系統が少ないこと から,ハイブッシュ系統はラビットアイ系統に比べて食 感が優れていると思われた.
冷凍果実として使用する場合を想定して,冷凍果実を 解凍した場合のドリップを率 Fi g. 7に示した.品種間差 が大きく,系統による差は明らかでなかった.
0 20 40 60 80 100 120 140 160
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
ア
ン
ト
シ
ア
ニ
ン
m g / 1 0 0 g
① ブル ー クロップ ② ジャー ジー ③ バ ー クレー ④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト
■ハ イブッシュ
■ラビットアイ
F ig.4 品種系統とアントシアニン含量
- 2.5 - 2 - 1.5 - 1 - 0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
硬
い
←
硬
さ
の
評
価
→
軟
ら
か
い
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー
③ バ ー クレー
④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト ■ハ イブッシュ
■ラビットアイ
F ig.5 品種系統と果皮の硬さの官能評価
- 2.5 - 2 - 1.5 - 1 - 0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
ざ
ら
つ
く
←
果
肉
の
ざ
ら
つ
き
→
ざ
ら
つ
か
な
い
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー
③ バ ー クレー
④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト ■ハ イブッシュ
■ラビットアイ
F ig.6 品種系統と果肉のざらつきの官能評価
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
ド
リ
ッ
プ
率
%
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー
③ バ ー クレー
④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト
F ig.7品種,系統と解凍後のドリップ率
果汁を製造する場合を想定して,搾汁率を Fi g. 8 に示 した.ハイブッシュ系統に比べてラビットアイ系統の搾 汁率が高い傾向が見られた.
以上の結果から,果実を形の残ったまま使用するシロ ップ漬け,冷凍果実,ジャムなどの加工原料としては食
29
感の優れるハイブッシュ系統が適性があり,果実の形を 残さず使用する果汁,ピューレーなどの加工原料として は搾汁率が高いラビットアイ系統が適性があると思われ た.
40.0 45.0 50.0 55.0 60.0 65.0 70.0
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩
搾
汁
率
%
① ブル ー クロップ
② ジャー ジー
③ バ ー クレー
④ コビル
⑤ レイトブル ー
⑥ ブリジッタ
⑦ ブライトウェル ⑧ ティフブル ー ⑨ ウッダー ド ⑩ デ ライト
F ig.8品種,系統と搾汁率
3. 2 果汁等一次加工技術の確立
Fi g. 9 に酵素処理による搾汁率の向上効果を示した. 最も効果が高かったのは 2 種類のペクチナーゼで,次い でマセレーション酵素の効果が高かった.セルラーゼに はほとんど効果が認められなかった.
40 50 60 70 80 90
ペクチナーゼ3S
ペクチナーゼS S マセロチームA
セルラーゼオノズカ
無処理
搾汁率 %
F ig.9 酵素の種類と果汁搾汁率
F i g. 10 にペクチナーゼを使用した搾汁工程における 果汁中アントシアニン含量を示した.
0 20 40 60 80 100 120 140
解
凍
直
後
酵
素
処
理
前
酵
素
処
理
後
酵
素
失
活
処
理
後
果
汁
中
ア
ン
ト
シ
ア
ニ
ン
m
g
%
F ig.10 果汁製造工程と果汁中アントシアニン量
45℃で 2 時間酵素処理することにより果皮中のアント シアニンがかなり果汁に溶出し,さらに酵素失活のため に 90℃達温処理を行うことで果汁として使用するのに 十分な量の溶出が認められ,特に色出し処理工程を実施 する必要はないと思われた.
以上の結果を踏まえ,果実約 50kgを使用し, Fi g. 11 に示した工程で果汁製造試験を実施したが,ハイブッシ ュ系統は搾汁残渣の利用を考慮して酵素処理をしなかっ た.搾汁率と得られた果汁の品質を Tabl e 1 に示した.
T able 1果汁製造試験における搾汁率と果汁品質
原料果実 搾汁率 % Brix 酸 % アントシアニンmg%
ハイブッシュ系 67.5 10.7 0.66 26
ラビットアイ系 81.5 12.2 0.61 115
ハイブッシュ系統,ラビットアイ系統ともにスクリュ ープレスで搾汁が可能であったが,ハイブッシュ系統は 酵素処理を省略したため粘度がやや高く搾汁率が劣った.
ハイブッシュ系統の果汁は Br i x が低く,酸含量が高か った.ラビットアイ系統の果汁は Br i x が高く,酸含量が やや低く各系統の果実特性を示した.
果汁のアントシアニン含量は酵素処理しなかったハイ ブッシュ系統がラビットアイ系統より明らかに低く,酵 素処理しない場合は別途色出し処理が必要と思われた.
■ 原料果実
① 国産ラビットアイ系果実 50kg ② 国産ハイブッシュ系果実 50kg
■ 工程
解凍 ↓
40℃まで加熱 ↓
酵素添加:ペクチナーゼ3S 0.1% ↓
40℃で2時間保温 ↓
スクリュープレス搾汁 ↓
殺菌・酵素失活:80℃達温 ↓
冷却 ↓
パルプ除去:30mesh
※ ハイブッシュ系果実については
酵素処理を省略
F ig.11 果汁製造試験実施方法